「マウナ・ケア山 自転車登頂記」

55歳、マウナ・ケア山(4205m)を初めて自転車で登りました!

アフエナヘイアウ

アフエナヘイアウ

ヒロ湾

ヒロ湾

自転車を押して登る

自転車を押して登る

メインランドの人と会う

メインランドの人と会う

キラウエア噴火口

キラウエア噴火口

イギリス人と会う、標高約4000m

イギリス人と会う、標高約4000m

標高4205mマウナ・ケア山登頂成功!

標高4205mマウナ・ケア山登頂成功!

天文台と夕日

天文台と夕日

ハワイ諸島には十回、マウナ・ケア山には車で五回行くが、今回自転車で行くのは初めてだった。
4205mのマウナ・ケア山の山頂には日本のスバル天文台をはじめ各国の天文台があり、そこへ通じる道がある。
道があるからには自転車でも行けるはずと思い、行くことに決めた。ただ高山病と自分の年齢が不安だった。

コナ空港に4日に到着してから、5日目にしてようやくマウナ・ケア山の登山道路に入った。覚悟していた急な登りでは、時速2~3kmになり自転車のメータで計測できなくなった。標高2800mのビジターセンターの近くのブッシュにテントを張った。夜空には巨大な銀河が大地に突き刺さり輝いていた。流れ星が見え、登頂成功を祈った。

今日が終わればマウナ・ケア山登頂というミッションから解放される。そして、あのだらりとした平穏な日常生活に戻ることができる。やるぞ!

朝7時半、出発して道はすぐダートになる。数メートル進むともう自転車を押していた。スピードは初めから時速2~3kmに落ちた。

出発して1時間、2kmぐらい行くと、またタイヤの空気が抜け始めた。たった2kmだが、センターに戻ってチューブを交換する体力と時間が無い。それに空気が入っていても、どっちみち押して行かなければならないので、山頂まで自転車を押し上げることにした。登りが急で酸素が薄くなってきているので、自転車を押すだけでもきつい。心臓がオーバーヒートしそうだ。ゆっくり、ゆっくり登らないと息が切れてしまう。急ぐとすぐバテてしまう。急ぐよりゆっくり登った方がトータル的に速い。距離計と時計を見ながら15分毎に速度を測り、ポイントに到達する時間を割り出していくが、酸素が薄く頭がボーとしてよく計算を間違える。

日常生活では何も頑張れない私だが、今苦しさにもがきながら登頂成功に向かって頑張っている私がいる。苦しいが、その苦しさに立ち向かっている私自身に感動する。やばい!クライマーズ・ハイになりかけている。ゆっくり深呼吸をし、酸素を吸収して正気に戻る。

旅行者は心配して声をかけてくれる。苦しいがアイム・OK!サンキュー!と返事する。車が通るたびに背筋を伸ばし笑顔になる。車が通り過ぎると我慢できず苦しい表情になる。軍やレンジャーの車も挨拶していく。

あと1マイルになった。ほぼ諦めていた登頂もこの時点で成功を確信できた。午後3時頃うなだれて自転車を押している顔をあげると、突然スバルとケック天文台が見えた。

やった!ここまでくればもう大丈夫。色々な国の天文台の横を通り過ぎて行くと、雲海の中からマウイ島のハレアカラ火山が頭を出しているのが見えた。

4時頃一番高い所にあるハワイ大学の天文台の横からマウナ・ケア山頂を見る。誰もいない。昼間の天文台群にも誰もいない。よし!チャンスだ。登山道を自転車で行く。最後は担ぎあげて山頂へ。

登頂成功!

嗚呼、やっとミッションが終わる。車で行けばコナから3時間ぐらいで行ける所を5日かけて登った。前輪が浮くほどの急な登り坂は自転車には厳しかった。最後の方はまさに登山そのものだった。酸素が薄く、苦しかったがダイアモックス(抗高山病薬)を飲んでいたので高山病の症状が出なくて助かった。
山頂で数枚写真を撮って天文台まで下山する。

6時、サンセットまでまだ時間がある。イギリスの天文台の風がこない所に自転車を止めた。周りは冷たい風が吹いているが、ここだけはポカポカと暖かい。横になり真横から夕陽を浴びているとだんだん気持ちが良くなり眠ってしまった。

30分ぐらいすると、夕日見学ツアーの車がぞくぞくと集まり始め目が覚めた。夕陽、2000万度の核融合と雲海のコラボのアート。マジックアワーに空がグラデーションに変わった。ショーは終わった。

自転車は空気が抜けているので下りはセンターまでレンジャーの車に乗せてもらった。私は登頂に成功して嬉しかったのか、レンジャーに色々下手な英語で話しかけていた。レンジャーは我慢してよく聞いてくれた。彼はレンジャーの仕事について話してくれた。「私は、この仕事が好きだ。人の為になるし、大自然の中で働けるので最高さ!」と言った。実に羨ましい。  

下山の準備をしていると、地元のおじさんが来て、「センターまでのレースはあるが、山頂まで行った者はいない。お前はクレイジーだ。」また、日本語で「ばかたれね。」と言って最後に「グレイト」と言って親指を立てた。今、私にとって「クレイジー」とは最高の褒め言葉に聞こえる。数年前まではマウナ・ケアのマの字も知らない私が地元の人も驚くことをやった。

センターを後にして、下りのスピードを楽しんだ。最速は時速80kmを記録した。アッという間にサドル・ロードに出た。空気は抜けていない、大丈夫だ。ヒロ方面のサドル・ロードもすごく良い道で快適に進み飛ばせた。ヒロに到着する。5日間かけて登った道を数時間で下ってしまった。 

ハワイ島では4205mの山頂に達し、約500km走行して、8月17日に無事帰国した。一時は登頂を諦めていたが、初挑戦で成功してとても嬉しい。今回は時間に余裕があったので、焦らず、一歩一歩ゆっくりと前進したのが功を奏したと思う。長い人生においても相通じるところがあるようだ。さて、次のミッションは何処へと思いを馳せる。

我も行く、心の命ずる(ミッション)ままに。我も行く、さらば昴よ。    (昴より)

その他情報

コナ>サドルロード>オニズカ・ビジター・センタ>ヒロ>カイルア・コナ

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2010-10-28

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